1970年代終わりに全国の遊廓赤線跡地を撮り続けた女性カメラマンがいた。
彼女の名前は石内都。
「連夜の街 〜ENDLESS NIGHT〜」と題された写真集が発表されたのは1981年。
赤線廃止の余韻が微かに残る時代に、彼女は全国の遊廓赤線跡地を記録では無く作品として写真に収めた。
そこに写し出されたモノクロの妓楼群はあまりにも生々しく、建物が辛うじて生き延びている証でもあるといえる。
その写真の迫力に僕はただ圧倒された。
とある日の事、よく足を運んでいる中村の家のお婆ちゃんと話をしていると
「あんた達みたいに遊廓の写真を撮ってる女性が家に泊まりこんでた事があったよ。今じゃ有名な写真家になったみたいだわ。」
それは石内都さんの事であった。
単に跡地を写真に収めるのでは無く、彼女はその街に溶け込んでいた。
中村だけではない、都内は勿論、安浦、飛田に至るまで…
連夜の街の最後にはこう記されている
『名古屋の中村遊廓をもってこの「連夜の街」は終了する。この街には新たな接触が待っているように思える。』
石内さんの中村に対する想いは特別なのかもしれない。
僕は石内さんに会いに行く事を決めた。